憲法記念日の「お決まりの議論」を超えて
5月3日の憲法記念日――この日になると、ニュースやSNSでは「憲法9条を守るべきか、それとも変えるべきか」という定番の議論が繰り返されます。
しかし今年、高市早苗さん(経済安全保障担当大臣)が発信したメッセージは、そうした毎年の議論を大きく超えるものでした。
「アメリカは自動的に日本を守ってくれるわけではない」
「憲法がネット犯罪対策の壁になっている」
「自民党には、かつて“幻の改憲草案”があった」
これら3つの論点は、私たちが憲法を「自分ごと」として考えるためのきっかけになります。では、それぞれの“真実”を見ていきましょう。
1.アメリカが守ってくれるとは限らない?
日米安保の「知られざる現実」
「日本が攻撃されたら、アメリカが助けてくれる」
多くの人がそう信じていますが、実はそれは誤解だと高市さんは指摘します。
日米安全保障条約の第5条には、アメリカが行動するのは「自国の憲法上の規定および手続きに従って」と書かれています。
つまり、日本が攻撃されたとしても、米軍が自動的に反撃するとは限らないのです。
また、具体的な防衛計画である「日米防衛協力のための指針(ガイドライン)」では、日本が「主体的責任」を負い、アメリカは「適切な支援」を行うと明記されています。
高市さんはこう語ります。

「日本の国民や領域を防衛するのは、あくまで日本自身なんです」
この言葉には、戦後長く続いた“アメリカ依存”の安全保障観を見直し、日本が「自分の国を自分で守る」覚悟を持つべきだという強いメッセージが込められています。
2.憲法がネット犯罪の“壁”に?
「通信の秘密」が生む思わぬジレンマ
憲法は国民の権利を守るための砦――そう信じている人は多いでしょう。
けれども、高市さんは「今の憲法が、逆に国民を守る妨げになっている部分もある」と語ります。
その代表例が、海外サーバーを使ったオンラインカジノや詐欺サイトの遮断問題。
「違法なんだからアクセスをブロックすればいい」と思いがちですが、実はそう簡単にはいきません。
理由は、憲法第21条で保障された「通信の秘密」。
特定の通信を国家が遮断する行為は、この権利を侵害する恐れがあるからです。

高市さんもこう語ります。
「野党の皆さんからも同じ意見が出ています。私もそう思います。もう少し書き方を分かりやすくすれば、安全な社会が作れるのに」
この問題は、もはや“技術論”ではありません。
憲法の文言が現代社会のサイバーリスクに追いついていないという、現実的で深刻な課題なのです。
3.自衛隊を「国防軍」に?
自民党がかつて作った“幻の改憲草案”とは
現在の自民党が掲げる改憲案は、4項目に絞られています。
しかし高市さんが「一番好き」と語るのは、2012年、野党時代にまとめられた“全条文改正版”の憲法草案です。

その中身は、まさに国家の設計図を根本から書き換えるようなものでした。
- 自衛権の明記:「自衛権の発動を妨げない」と、国家の権利を憲法に明文化
- 「国防軍」の創設:自衛隊に代わり、総理を最高指揮官とする「国防軍」を設置
- 任務の拡大:防衛だけでなく、国際平和活動や災害救助も任務に含む
- 領土保全の義務:国民と協力し、領土・領海・領空を守る責務を明記
- 軍法会議の設置:軍内部の規律を保つための独立した司法制度を創設
この草案は、単なる「自衛隊の名前を変える」というレベルではありません。
それは、日本が戦後の“受け身の国家”から、自立した“守る国家”へと変わろうとした壮大な試みだったのです。
憲法を「自分ごと」として考える時代へ
今回紹介した3つの論点――
① アメリカ依存の現実、
② 憲法とネット社会のズレ、
③ 幻の改憲草案。
これらに共通するのは、「日本をどう守るか」「どんな国でありたいか」という問いです。

この機会に、憲法を少し読み返してみてください。
そして自問してみましょう。
「この条文は、今の時代に合っているだろうか?」
その一歩こそが、私たち一人ひとりが“未来の日本”をつくる最初の行動になるのかもしれません。



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